2020.06.05
開花した人 vol.9
開花した人
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恋に落ちたかのように 調香の世界に導かれて


パリのアトリエで、日本の雅にインスパイアされた香水を製作する調香師・新間美也さん。新間さんが手がけるブランド「ミヤ シンマ パルファン」は、唯一無二の日本的な香りで人々を魅了しています。いまや世界中にファンを持つ彼女を調香師へと導いたのは、偶然読んだインタビュー記事だったそうです。
「大学卒業後、私は実家の静岡県で一般企業の事務の仕事に携わっていました。やりがいもありましたが、同じことを繰り返す毎日に疑問を持つように。そんなとき手にした雑誌に、海外の調香師のインタビューが掲載されていて『調香師とはオーケストラの指揮者のようなもの』という一文に触れ、“これだ!”と直感したんです。幼いころからピアノや作曲に親しんできたからでしょうか。香りで音楽を奏でるような調香師という存在に、こころ魅かれたのかもしれません」
当時、日本では調香師という職業はメジャーではなく、一から図書館で調べたという新間さん。すると「調香の本場フランスで学びたいという情熱が抑えきれなくなって。今考えると香りを生みだす調香の世界に、私は恋をしてしまったのですね」。
一度目の渡仏では、希望する学校の見学もかなわず帰国。「その後、イタリアのフィレンツェを訪ねたとき滞在先のホテルの方に調香への思いをお話したら、地元の調香師を紹介してくださって。フランスのヴェルサイユ大学付属の調香学校で教鞭をとる、彼の師から学ぶ道が開かれていったんです」
パリが愛した 「日本」を
イメージした香水の誕生


パリが愛した 「日本」を
イメージした香水の誕生
27歳で本格的に渡仏すると、学校初の日本人学生として手厚く迎えられたという新間さん。調香の勉強に邁進する中で、現地のフランス人から日本についてさまざまな質問を受けるようになったといいます。「香りを通して日本を紹介できたら、という気持ちが自然とわいてきました」。
海外の方にも伝わりやすい日本語を、と思いついたのは百人一首かるた。百人一首をひもときながら句を選び、その句に合わせた自作の詩をつづります。そして、その詩からイメージして作られたのが「ミヤ シンマ パルファン」のデビュー作ともいえる、「花」「月」「風」の3種のオード・トワレ。和紙に筆でさらりと描かれたようなシンプルなデザインの小さなボトルを桐箱に収めた香水は、フランスの老舗百貨店「ボン・マルシェ」のバイヤーに認められ、またたく間にパリっ子たちに人気を博しました。
「香水を通じて日本への関心の高さに驚かされました」という新間さんは、その後パリと日本を往復し調香のスクールも開催するように。香りの伝道師として活躍の場を広げていきます。「調香の世界を知れば知るほど、香りの本場フランスで学ぶことの意義を感じました。貴重な香りの素材となる植物の生育状況や世界的なトレンドにも精通する必要がありますから」。しかし10年が過ぎ、充実した毎日を送っていた矢先、大きなスランプを経験。40代を前に活動を休止し、新間さんはフランスを離れ帰国の途に就いたのです。
“人”に導かれて今がある。
幸せと思える人生に気づいて


“人”に導かれて今がある。
幸せと思える人生に気づいて
「心が凍ってしまったように動かなくなって。帰国してからは、友人はもちろん日本の調香スクールの皆さんが私を待ってくれていたのが大きな支えでした」
辛い数年を過ごす中、友人が誘ってくれたイタリア・カプリ島旅行が転機に。飛行機の窓から海に浮かぶ山と緑に包まれた島が目に入ったとき、「美しいもの」に自分の心が動いたのを感じたといいます。2015年に活動を再開すると、また新たな気持ちで今の日本を香りで表現したいと香水をリニューアル。パッケージは桐箱から、フランス人がより日本らしさを感じるという黒漆のスタイルに。香水のバリエーションも増え、新たな「ミヤ シンマ パルファン」の顔となっています。
「応援してくれていた父が他界して以来、私はずっと“頑張るね”と父に手を合わせてきたのです。でも最近“十分幸せよ”と言えるようになりました。少し肩の力を抜いてもいいのかな、と。そして、フランスの女性たちは年齢を重ねた人ほどエレガント。その姿を見ていると、年齢は怖くないと思えるようにもなりました」
最近は、フランス人のご主人とフランス産ワインを軸としたマリアージュ講座を日本で開くなど、香りの楽しみ方を広げている新間さん。
「これからも日本を世界に自慢する思いで、香りの持つ美しさを最大限に引き出すような調香を心掛けていきたいですね」
これからも世界に、日本のスピリッツを「香り」で届けてくれるに違いありません。
香りの持つ美しさを引き出して
日本の感性を広めていきたい


あなたにとって
「美しさ」とはなんですか?
バランスと調和
「美しいものというのは、バランスがよく調和がとれているものです。そして心地よさ。さらにオリジナリティ。それは人にも、香りにも共通する美しさだと思います」
あなたが好きな花はなんですか?
ローズ
「花は香りに欠かせない存在なので1つを選ぶのは難しいのですが、赤いローズでしょうか。ローズはパリを象徴する花だとも思います」
肌のお手入れ方法のポイントは?
健やかな肌を保つこと
「メイクでカバーすることよりも、クレンジングやスキンケアで肌の美しさを保てるよう意識しています」
「いつも肌の乾燥が気になる長時間のフライトでも、今まで味わったことのない良さを実感しました。また香りからも品質の高さを感じられます」
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